MacよりもWindowsのほうが歴史が長い? 〜右クリックメニューの起源〜

一方のWindowsでは、最初から2ボタン以上のマウスを標準的に使用するようにはなっていたものの、左ボタンと右ボタンの違いをシステムレベルではっきりと分け、それぞれの用途を明確に定めたのはWindows 95からだった。その時点で、右ボタンはコンテクストメニュー用として割り当てられた。従って、コンテクストメニューも右ボタンによる操作も、WindowsのほうがMacより歴史が長い。

ASCII.jp:右クリックメニュー、その歴史と効果 (3/3)|柴田文彦の“GUIの基礎と実践”


必ずしも「間違い」というわけではないのですが、右クリックメニュー自体は Mac の前身の Lisa のプロトタイプ時代にすでに試されていますから(Lisa のプロトタイプは2ボタンマウスだった)、Microsoft より Apple のほうが取り組みとしては古い、というのが実際です。まだメニューバーやプルダウンメニューさえなかったころの話。


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Folklore.org: Busy Being Born より)



もちろん言うまでも無く、この Lisa の試みが右クリックメニューの最初ということも全然なくて、その直接の手本となったのはアラン・ケイたちが Alto で動かしていた暫定ダイナブック OS である Smalltalk-76 やその前身の Smalltalk-72 です。

Alto は3ボタンマウスを採用していたので、右クリックならぬ第二ボタンクリックメニュー(黄ボタンメニュー)でしたが、用途は同じです。ただ初期のころはアクティブなウインドウの右上外側にポップアップ表示されていたようで、現在のように、クリックした場所にポップアップするようになったのは '77〜78年ごろみたいです。

歴史的資料としてちょっと面白いのは、Smalltalk-72 では '77年2月の画面ですでにウインドウ内に表示されているのに、Smalltalk-76 では '77年10月の画面でもまだウインドウの横に表示されているのが確認されることです。GUI に関しては、開発がスタートしてまだ1年たらずの Smalltalk-76 より歴史のある Smalltalk-72 のほうが進んでいたという可能性が考えられます。


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(1977年2月ごろの Smalltalk-72)


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(1977年10月ごろの Smalltalk-76。http://users.ipa.net/~dwighth/smalltalk/St76/Smalltalk76ProgrammingSystem.htmlより)


また、ラリー・テスラーの発明である、モードレスなカット&ペーストやアンドゥといった機能がどういったタイミングで、どのように Smalltalk システムに取り込まれたのについても、この右クリックメニューとは切っても切れない関係であるはずなので、たいへん興味深いところです。